庭木の手入れ|剪定の目的と道具の紹介

庭木の手入れとは庭木の健康を守り、樹形を維持すること

庭木の手入れはなぜ必要か
庭木の手入れ【剪定】は不要な枝を切る、または残すことによって目的の形に整え、樹形を維持するために行います。幹枝の曲がり、釣り合い、伸長度、枝の配分量、配列などが合理的に整い樹形の美が生まれてきます。その他に、通風・採光をよくして病気や害虫の被害を防ぎます。また、生育状態を見ながら枝葉量を調整することによって、庭全体の見通しや明るさ、風通しを調整する、樹冠線(木全体の輪郭)や幹・枝の線を強調することができます。木と家や木と木、木と石との兼ね合い、庭全体のバランスを見ながら剪定をする必要があります。
剪定の歴史
剪定の技術は、15世紀の中頃、室町時代にはすでに生まれていました。室町時代を代表する作庭書「山水並野形図」には、剪定を意味する「すかす」の語が使われており、庭木の手入れ・剪定の考え方などが記されています。江戸時代には、作庭書「築山庭造伝(前編)」にて「木造りの事」としてより技術的に記されております。「鎌割、鋏割、指割、葉刈などといふ種々の仕事ありけり・・」とあり、「割」は今でいう、「透かし」剪定のことを指し、「刈」は「刈込」のことで、表面を刈り揃えながら押さえ込むという意味です。剪定を行う際、鋏はもちろんの事、樹種によっては手指をつかって葉や枝をとる剪定方法もあります。マツの古葉とりとモミジの小枝をとるときに用いられるなど、現代にまでその剪定手法は息づいています。

庭木の手入れ(剪定)の道具について

鋏類
木鋏
庭師が腰から離すことのできない常備品です。通常は人差し指を鋏の「足」の外に出し、「肩」と呼ばれるところにかけて握ります。写真は、大阪府堺「佐助」の津島型で、刃がプロペラのように仕立てられており切れ味抜群です。
木はさみ/庭木の手入れ、剪定                              木鋏|庭木の手入れ・剪定の道具1
刈込鋏
生垣や玉物などの刈込に使用します。写真の上は刃が薄く切れ味が良いためキャラ、マキなど成長が遅く葉の柔らかい「葉もの」と呼ばれる木の手入れに使い、写真下の刈込鋏はカシ、モクセイなど成長が早く枝の太い木を刈るのに使います。左手は固定し右手だけ動かすと刃先がブレずに刈ることができます。
刈込ばさみ/庭木の手入れ、剪定                            刈込鋏|庭木の手入れ・剪定の道具2
足場
脚立
以前は木製の脚立でしたが、現在はアルミ製の脚立が主流です。脚立は、右利きの人の場合で体の左側にくるように使用し、時計回りで作業を行います。
はしご
脚立ではとどかない高い木の剪定に用います。木の枝や幹に直接かけることを「バタかけ」とも言います。目的の所に枝がない場合、枝の叉に丸太をかけてそこにハシゴを縛ります。この丸太はナゲワタシまたはサシコミと呼ばれています。このサシコミより上に登る場合は、唐人(トウジン)と呼ばれる丸太をハシゴに差し、ロープ(細引き)で固定します。 現在使われているハシゴは、ほとんどがアルミ製のものでありますが旧家の軒先には、庭師の先人達が使用したとされる木製のハシゴが現存しています。下の写真は、つくば市にある旧家の長屋門に仕舞われたはしごとサシコミです。元口が、地面で擦れて丸くなっているので庭師が使用したものであることが分かります。先人たちはトラックのない時代に、集落のある屋敷に道具一式を仕舞わせてもらい、その道具を使って台車にのせその集落の家々をまわっていました。
剪定の道具1/庭木の手入れ                              長屋門にかかるハシゴ(つくば市)
剪定の道具2/庭木の手入れ                         長屋門の軒に仕舞われたサシコミ(つくば市)