茨城県技能祭「垣根」展示 笠間市芸術の森公園 

2015年茨城県「技能祭」造園の部において、古平園が網代垣を展示しました。
                                2015.11.01~11.02

 

 展示説明                  茨城県技能祭2015「網代垣の説明」文より

 ―網代(あじろ)垣にみる造園技能とその展望―   
1.はじめに
 「垣」というとどのようなものを想像されるでしょうか。ここに展示してある竹垣を含め生垣、石垣などが挙げられると思います。「垣」は内と外を仕切るものであり、それに似た言葉に「塀」があります。塀は物理的に外からの進入を防ぎ強度があるものに対して、「垣」は容易に越えやすい仕切りであり、越えてはならない心の約束のようなものがあります。現代風にいえば垣はフェンスであり、日本の垣は「結界」としての意味が強いと考えられます。「垣根越し」と言うように、内と外との関わりを保ちながら仕切るという機能を持つ「垣」は現代の庭においても活躍の場があるのではないでしょうか。
2.網代垣の名称
 網代垣は最も古い歴史を持った垣の1つで、平安、鎌倉時代には「檜垣」とも呼ばれていました。檜垣は檜の薄板を使って網代編みとしたもので、割竹も使われていました。この割竹を使ったものが「網代垣」と呼ばれています。このように、材料の違いにより呼び方も異なり、静岡県沼津地方ではハコネダケとよばれる篠竹を使って、網代に編んだものを「沼津垣」と呼んでいます。現代における竹垣の基本となっている江戸時代の作庭書「石組(いしぐみ)園生(そのう)八重(やえ)垣伝(がきでん)」(籬島軒秋里(りとうけんあきさと)著・1827)には沼津垣の図が描かれています。

                                 沼津垣の図
3.網代垣にみる造園技能
 網代垣は、竹を細割りにし、2、3枚を一組として編みます。普通、割ったままの状態で編みますが、竹は皮(緑の部分)よりも肉(白い部分)の方がもろいので、肉を剥いで使った方が長持ちします。この割竹を剥ぐという技術は、主にカゴなどの竹細工で使われており、網代編みの技術はザルの底編みの部分や箕(み)(現代の塵とりのようなもの)などに使われています。
造園は、自然材料である木・土・石・水を扱います。植物を扱うことに長け、植物材料を加工して使う竹垣をはじめ、石を敷く、積む、組む、など多様な技能があり、それらを組み合わせて、人が快適だと思える空間をつくることが造園技能であります。これらの造園技能は「百姓の技能」が美化されたものと考えられます。農業が仕事の主流であった時代、家づくりにおける梁の皮むき、土壁の下地に使われる竹の小舞かき、壁土の調達などは当家の主人の仕事でありました。農作業の傍ら、家づくりに関わるそれぞれの職種の手伝い(地走り)をすることによって知識豊かでした。それが「百姓(ひゃくしょう)」です。カゴやザルなどの民具なども百姓が農閑期の副業として作っていました。
やがてプラスチック製品の登場により、竹のカゴやザルは使われなくなってしまいました。竹垣にも同じことが言えます。しかし、竹垣は青々として新しいのがいいとか、時間がたってからの方が味があっていいというように、好みの個人差があるところに庭の面白さがあると思います。
 この網代垣を通して、農具をはじめとする道具の使い方、結びなどの手仕事を基本とする百姓の技能に美の観点を加え、発展した造園技能のすばらしさを感じて頂ければ幸いです。

                                 (有)古平園

2017年10月26日