地形を活かしたお庭/茨城県土浦市

 お施主様からの最初のご依頼が、「石を使って歩きやすいアプローチを造って欲しい。」とのことでした。お宅は霞ヶ浦低地から台地へとあがる傾斜地に位置しており、道路との高低差が約2.1m。奥行き11.5mでおさめる必要がありました。既に庭がつくられていましたので、その解体から始まり、既存の石の中から石積みに適したものを選びながら、足りないものは補充しての作業となりました。アプローチの勾配は8%。用に徹することにより特徴ある庭とすることができました。石は、景石、組石、飛石、張石、積石など庭師の好みによって使い分けられます。石との出会いも楽しみの一つで、解体時に土の中に埋もれていた部分が面となることもあります。千差万別、そこに石の面白さがあるように思います。

布泉型水鉢と桜川玉石による枯山水の庭

 布泉型水鉢と桜川玉石による枯山水の庭

第二期工事では、主庭部の作庭と石階、北側の土留めの改修工事を施工。粗雑に組まれていた筑波石の解体と、植栽されてから20年以上経過した樹木の移植から始まりました。移植も庭師の技術のひとつで、掘り取りから根巻き、植栽へと庭をつくる過程でも見せ場があります。石組や崩れ積み、役石に至るまでほとんどの樹木や石は既存のものを利用しました。主庭は、布泉型の手水鉢を水源とし桜川玉石を並べ霞ヶ浦へ流れる桜川を表現し、筑波石の石組と御影石による洲浜張りは、筑波山周辺の地質を表しました。また、伝いには雲仙敷きを配し、雲の上を歩くような軽快さを出しました。垣根は、当地域で比較的容易に手に入れることができる真竹を使用し、肉を剥いで耐久性のある網代垣としました。
 

桜川は、筑波山の麓を流れ、それらを中心とする豊かな自然環境や歴史が数多くあります。弁慶七戻りや大仏石をはじめ自然をそのままに、自然の造形物として崇拝した筑波山。一方、宝篋印塔を山頂に製作するなど、石を加工し、人工と自然との調和を目指した宝篋山。先人たちの自然へのとらえ方は、現代の庭に通ずるところがあります。

近年、庭の解体も依頼されるようになり、バブル期の石や樹木をこれでもかと入れた庭など、生活様式の違いなどから庭を「負の財産」としてみられるのも事実です。重く硬い石や手間のかかる樹木は遠慮されがちではありますが、そこには深い歴史性が感じられます。筑波石は、7500万年前という大昔にマグマが固まってつくられました。その岩からはがれ落ちた石が採掘され、やがてさび、苔がのります。庭木も長年手をかけられて、形づくられたものです。それらを再利用し、庭に活かすことは庭師の使命であると思います。
         雲仙敷き・・・当社オリジナル。大判の御影石を一枚一枚加工し張り合わせた。

                          建築資料研究社「庭NIWA」2017秋より

沓脱石と州浜張りの蹲踞まわり

                               沓脱石と州浜張りの蹲踞まわり

主庭の伝い|庭のアプローチ

                               主庭の伝い|庭のアプローチ

雲仙敷き

                                      雲仙敷き

筑波石による石段

                                    筑波石による石段

主庭へのアプローチ

                                     主庭への伝い

置燈籠「玉手」と御影石による野面積み

                           置燈籠「玉手」と御影石による野面積み

筑波石の石組

                                     筑波石の石組

崩れ積みによる外構

                                   崩れ積みによる外構

つづら折りのアプローチと石積み

                              つづら折りのアプローチと石積み

                              >古平園の庭づくり